季刊誌

日本の扉 浅草 Vol.34

槐の会季刊誌34号

掲載内容

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コラム:観音様と龍の関係を伝える金龍の舞

毎年3月18日の観音様示硯会に浅草 寺境内で行なわれる「金龍の舞」。もし 見逃した方は、10月18日の菊供養会、11月3日の東京時代まつりでも 披露されるので、こ隠居の話を闘い て、今から予習しておいてはいかが?

“8づくし”のめでたい舞

春だねえ。桜やレガッタもいいけど、オレが浅草の春といって思い出すのは、3月18日に行な われる「金龍の舞」さ。金色の龍が春霞の中をフワフワ舞っているのを見ると、なんだか夢でも見ているような、いい心持ちになっちまうんだ。それに憧れて、オレも昔はちと参加したことがあってね。
そもそも「金龍の舞」というのは昭和33年、敗戦から日本が復興し、浅草寺の本堂が再建されたの を祝って寺舞を作ろうって話で生まれたんだ。浅 草寺には知っての通り、推古天皇36年3月18日の早朝に、漁師の投網に観音様が引っかかり、その後に天から龍が降りてきたという昔話がある。その伝説を舞にしたもので、龍の大きさは全長18m、総重璽88kg、うろこの枚数は8888枚、それを8人で担ぐという”8づくし のめでたい舞なんだ。

体育会系で普段から筋トレ

オレが浅草寺舞保存会に入ったのは高校生の時よ。今 じゃ厳しい制限は無いが、当時は商売人の長男しか入れなかった。体育会系で、後から入ったら年上でも後輩。それが嫌で辞めていった ャツもいたけどな。舞も 教えても らうんじゃなくて、先輩を見て習う。そうするうちにある日「持ってみろ」って言われるんだ。大体3-4年で本番デビューかな。
稽古は夏に一日合宿があって朝から夕方まで練習 する。あとは本番 前の14日からl 6日の夜に集中的に練習する。直前のl 7日は龍の修理な どに充てるため空けておくんだ。え、それだけの稽古で出来るのかって? そりゃ皆、忙しい商売人だもの、そうそう集まってはいられねえから集中力で勝負するのさ。
その代わり普段から体は鍛えてる ょ。オレだって若い頃は筋トレしてたんだ。龍が88kgを8人で担ぐから一人当たりl l kg、前を行く蓮華珠もl 0kg あって、1 0分間くらい舞い続けるからね。腕だけでなく上半身もかなり筋肉が必要なんだ。

袈裟の色で年期が分かる

蓮華珠は何なのかって? あれこそ観音様の象徴だよ。観音様は蓮の花の上にお座りあそばしているだろう?でもお客さんたちも蓮華珠にはほとんど興味は無くて、解説を聞いて「なるほど」って人が多いんだけどね。その観音様を慕って、龍が蓮華珠を噛んだり、優しくお守りしている感じをいかに出せるかが、舞の見 せどころだな。何事もタイミングが大事で、龍の頭が尾をくぐる時も息が合わないとからまっちまう。とぐろを巻くクライマックスはスピーディーで、10分間の中でも一番の見ものだろうね。
よく見るとわかるけど龍は前から1、2,8人目が大柄で、真ん中に小柄な人を置くようにしてるんだ。そうすると龍がきれいに見えるからね。あと袈裟の色も年期によって違うんだぜ。若い人は緑、次は豚脂、紫…っていう風にね。それを見ると今 回は若いチームだな、あるいは熟練のチームなんだなってのが分かる。1日に3回舞うけど、たいがい1回目が新人、2回目がメインのベテラン、3回目に中堅が舞うことが多い。袈裟は観音様からいただいた名誉なもので、退会する時はお返しする。もちろんオレもお返ししたさ。
舞が終わって伝法院へ帰っていく時に、頭を噛んでもらいたがるお客さんが最近は特に多いね。あれをするかしないかは、龍頭をやっている人の気分次第。行儀の悪い人にひげを抜かれたこともあるんで、サービスはほどほどにしないといけねえな。

浅草っ子の気持ちの表れ

舞を見るのに、特等席を教えてくれって?あんたも欲張りだね。でも嫌いじゃないよ。ここだけの話、本堂の周囲の廻り縁、欄干があるところから眺めるのが一番いいんじゃねえかな。あんまり舞の近くに寄りすぎるよりも、少し離れた高いところから見た方が、全体がよく見える。公式のDVDもあそこから撮ってるしね。
今、メンバーは85人くらいかな。浅草の商家の息子ばかりでは成立しなくなってきた反面、他の地域から金龍の舞をやりたいって人が入ってきてくれる。誕生から57年、時代と共に会のあり 方も変わってきているみたいだね。
だけど浅草の人間にとって、観音様は生きる源だ。およそ1400年程前に観音様が現れて、浅草 寺が出来て、今の浅草がある。観音様をお慕いする龍の気持ちは、オレたち浅草っ子の気持ちでもあるんだ。そのことを感じながら見てもらえたら嬉しいねえ。

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  3. 菊供養会
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