季刊誌

日本の扉 浅草 Vol.35

槐の会季刊誌35号

掲載内容

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浅草歳時
ウチのイチオシ!
コラム他

コラム:大きな熊手で福をかっこむ酉の市

薯い夏がようやく終わったと思った ら、あっという間に11月。今日はどうも、お客さんたちの足が観音様や六区 を抜けて北西へ向いているようです。ぁ、そんな人波の中にこ隠居が。手に 持っているのは小さな熊手ですか?

酉のイチなのか、酉のマチなのか

おう、相変わらす油売ってるな。暇だったら一緒に行くかい、おとりさま。そうだよ、これから鷲神社の酉の市に行くのさ。今年は何たって、三の酉まであって、そういう年は火亭が多いって昔から言われている。そうならないように、しっかりお参りしとかないとね。
おとりさまは千束にある鷲神社の愛称だ。鷲神社と言いて「おおとり神社」と読む。ちなみに定立区のおとりさまは「大競神社」と吾いて「おおとり神社」。鴛だけでも大きいのに、ダメ押しって感じだな。江戸時代から続いている由緒正しき酉の市はこの二社だけなんだ。
そもそも酉の市ってのは、日本武尊が東夷征的の帰り道、鷲神社前の松に熊手をかけて祝ったのが11月の酉の日だったことにちなむもの。本当は酉のイチじゃなくて、マチだったんだぜ。神社の例祭だもの、酉の祭とかいてトリノマチ。だけど祭に市が立ったので、次第に市の字が充てられることが多くなったんだ。

熊手は定価で買っちゃいけない?

市では福をかきこむ縁起物として熊手を買うならわしになっているのは有名だな。他に縁起物として有名なのは、大きな八頭芋。昔から頭の芋(とうのいも)と呼ばれ、人の頭に立って出世できるといわれている。たくさんの芽が出るので、子宝に恵まれるともいわれるな。
昔は黄金餅というのもあった。餅米と粟を半々で攘いた黄色い餅のことで、小判によく似ているので金持ちになると言われていたけど、残念ながら今は見ないね。今でも売っているのはほのかに甘い餅に山椒の風味がさわやかな切山椒。上品な味わいで俺は好きだね。
ところで昔は熊手を買う時は、定価で買っちゃいけないと言われていたんだ。熊手屋さんと商談をして値切る。それで安くなった差額はこ祝儀として置いてくるんだ。結局は定価で買うんだけど、それが粋だとされていたんだね。
それから最初は小さい熊手を買って、徐々に大きくしていくと商いも繁栄していくと言われる。じやあ何で俺がこんな可愛い熊手を持ってるかって? 俺も商売をやってる頃はでっかい熊手を買っていたさ。でも店をせがれに譲ってからは欲張らすに小さいのにすることにしたの。身の丈に合った福だけかっこめれば、それで十分ってね。

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